Mind Lab / マインドラボ 活動報告ブログ

マインドラボは、ボードゲームを使って「生きる力」「考える力」を養う教育カリキュラムです。イスラエル生まれで、現在世界15カ国で教えられています。

2013年度終了:アンケートをまとめました

 淑徳小学校(東京都板橋区)の放課後クラブ「淑徳アルファ」のマインドラボクラスは、3月26日のクラスで、2013年度の年間カリキュラムをすべて終了しました。淑徳小学校での初年度は、小学校2年生から4年生までが異年齢クラスで学ぶスタイルで行いました。2クラスで34人の児童がマインドラボを学びました。
 年間で9つのシンキングゲームを教具として利用したほか、ワークブックを一人1冊ずつ持ち、さまざまな問いかけに「自分がどう考えるのか」を文字に書き、書いたことを発表し、みんなでディスカッションする、という授業を行なってきました。
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 年度の最後に、児童たちにアンケートに回答してもらいました。

マインドラボは楽しかったですか?

 まずは、マインドラボの授業が楽しかったかを訊いてみました。

  • 楽しかった 20
  • まあまあ楽しかった 1
  • あまり楽しくなかった 0
  • 楽しくなかった 0

 児童たちにとって、ゲームをプレイすることは楽しいことです。マインドラボでプレイするゲームは、「学びのためにデザインされたもの」ではありません、まず楽しんで、それから学ぶ、というふうに設計されているからです。ですから、「楽しくなかった」という児童はいません。
 私たちは、楽しくないと学べないと考えていますので、この結果は当然ということになります。

 マインドラボのワークブックの表紙には、「Education is Child's Play」と書かれています。楽しいからこそ、学ぼうという意欲も生まれますし、真剣に考えるようになります。
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 マインドラボを教える先生/インストラクターに求められるのは、児童を楽しませ、そして楽しませるなかに「考えるポイント」を埋め込む、ということだと思います。

マインドラボで楽しかったのは、どんなところですか?

 次に、どんなところが楽しかったのかを訊いてみました。この質問をするのは、「ゲームが楽しいのは当たり前」であって、マインドラボとしては、その先にある「考えること」を楽しむ子どもたちを育てたいと思っているからです。そうした要素が、受講してくれた児童たちの中にあるのかを知りたいと思って、この設問を用意しています。

  • アバロンやマンカラのゲーム中のときの、かったとき。ゲームをやっているとき。やったゲームぜんぶ。
  • いろんなゲームを体験して学んだこと
  • 先生との対せんとか、れん勝したときにたのしいです。
  • マンカラ
  • 先生がわかるように教えてくれて、わたしがあまりすきじゃないゲームも楽しくやってくれたところ
  • 先生がせつ明が、短くわかりやすくて、長くゲームができたところ。

 やはり、「ゲームそれ自体が楽しい」「勝てたら楽しい」という回答が多く見られます。
 それ以外の回答については、以下のようなものがありました。

  • ゲーム中に考えたこと
  • いろいろな友だちがつくれてすごくなかよくなって、すごく楽しかったです
  • ゲームをやっている時、置く場所などが分かった時、ゲームで勝った時
  • いっぱい考えたり、みんなの答えがおもしろかった。思った以上にかてたのでめっちゃたのしかった。

 ここで見られる、「考えたこと」「友達が作れたこと」をおもしろいと考えたり、「みんなの答えがおもしろい」というふうに評価したり、という部分が、まさにマインドラボで教えたいと思っている部分です。

 マインドラボでは、4つのスキル群を学習目標に掲げています。それは、

  1. 認知的スキル
    • 問題を発見し、それを解決すること
    • 計画を立てて行動したりすること
    • 情報を正しく読み取り、それに基づいて行動する、など
  2. 感情的スキル
    • 勝った時、負けた時に、自分の感情をコントロールすること
    • 失敗したことから立ち直り、次への教訓を学ぶこと、など
  3. 社会的スキル
    • 他者を尊重すること
    • 他者と一緒に何かをすること、など
  4. 倫理的スキル
    • 健全に競争をすることの良さを知ること、など

 児童たちが書いてくれたアンケートを読む限り、こうした4つのスキル群が、少しずつであるとしても、きちんと伝わっているのかな、と感じます。

マインドラボで難しかったのは、どんなところですか?

 次に、マインドラボでどんなところが難しかったのかを訊きました。

  • ゲームのとき、どうしてまけたか、がかんがえられない。
  • やってから気づいて「あっだめだ」と思うとこ
  • いろんなことを考えること
  • 相手がするどいところです。
  • 考えることがむずかしかったです。
  • やられそうになった時にそれをふせぐこと
  • 先生とたいせんすること。理由は先生が強かったから。
  • (ワークブックに)りゆうをかくところ
  • 自分のコマを、どううごかせばいいのかむずかしかった
  • 相手が思いどおりに行かないところ
  • あまりすきじゃないゲームを考えるところ
  • ワークブックの問題
  • きづかず玉をいれちゃったりするところ
  • しんごうをつけること

 ワークブックの問題が難しかった様子が伝わってきますが、それでもまったく書けない、という児童は、授業が進むに連れて減ってきます。「正解を書く」のが目的ではなく、「どう考えたのか」を書くことが目的であることがわかってくるからです。また、先生/インストラクターも、正解を求めていないことがわかってくるので、自由に自分の思っていることを伝えようと、ワークブックに取り組んでくれました。
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 最後の方にある、「しんごうをつけること」というのは、「何か行動する時に、一度頭の中で赤信号を点けて、立ち止まって考えよう!」と言い続けていたために、出てきた表現です。うっかりした失敗を「あ、信号つけてない!」と児童が反省するシーンも教室では多く見られました。
 信号を点けて立ち止まって考える、という習慣は、ゲームで負けない、ということ以上に、日常生活の中でも役立つはずです。

まとめ

 「ボードゲームを教具として考え方を学ぶ」というのは、学校現場では異質な学びだと思います。
 教室はいつも賑やかですし、ひとつの正解があるわけでなく、みんなが思い思いの考えを述べ、それをみんなで訊いて、「そういう考え方もあるか!」と感心する、というような教室にしたいと思って、1年間、小学校に通って教えました。
 「どうしてだろう?」と疑問を持ち、「僕はこう思うんだけど…どうしてかっていうと…」と自分の考えを発言できるようになる児童が、これからどんなふうになっていくのか、小学校卒業まで、見守りたいと思います。


 4月からは新年度が始まります。「淑徳アルファ」のマインドラボでは、新・2年生を迎えてクラスを開設します。また、継続して学ぶ児童は、新しい年間カリキュラムに取り組むことになります。2年目も、「考える」授業を展開していきたいと思います。